米国株や米国ETF(多くの銘柄をまとめて買える投資商品)で配当をもらうと、「あれ、思ったより手取りが少ないな」と感じたことはありませんか。実はその配当、アメリカと日本の両方で税金を引かれています。これが「二重課税」です。取り戻せる仕組みが「外国税額控除」ですが、名前が難しくて後回しにしがち。この記事では、初心者さんがつまずきやすいポイントを、よくあるギモンにひとつずつ答える形でやさしく解説します。
はじめに:なぜ今このテーマなのか
2026年の確定申告(令和7年分、受付は2026年2月16日〜3月16日)では、米国株の配当を申告して税金を取り戻す人が例年以上に増えています。理由はシンプルで、円安が進んでいるからです。2026年7月時点でドル円は約40年ぶりの162円台。同じ「100ドルの配当」でも、円に直すと1万6000円を超えます。ということは、アメリカで引かれる税金(円換算の金額)も過去最大級にふくらんでいるわけです。取り戻せるお金が大きいからこそ、今このテーマを知っておく価値があります。
さらに、2026年度(令和8年度)の税制改正大綱では、NISA(少額投資非課税制度=もうけに税金がかからないおトクな口座)が子ども向けにも広がる方向が示されました。制度がどんどん広がる一方で、「NISAだと外国税額控除は使えない」という落とし穴は今も残ったまま。ここも後半でしっかり説明します。
それでは、ギモンにお答えしていきましょう。
Q1. そもそも「二重課税」って何ですか?
ひとことで言うと、同じ配当に対して、アメリカと日本の2回、税金が引かれてしまう状態のことです。
米国株の配当は、まずアメリカ側で10%が引かれます(日本とアメリカの取り決め=日米租税条約で、本来より軽くしてもらった税率です)。そのあと、日本に入ってきた残りに対して、日本の税金20.315%(所得税・住民税・復興特別所得税を合わせたもの)がかかります。
100ドルの配当を例に、お金がどう減っていくかを見てみましょう。

100ドルのつもりが、手元には約72ドルしか残りません。3割近くが税金です。「配当利回り4%のはずが、手取りだと3%を切っていた」というのは、この二重課税が原因なんですね。
Q2. 引かれっぱなしなんですか?取り戻せないの?
いいえ、取り戻せる場合があります。それが外国税額控除という仕組みです。
これは「アメリカで払った税金(さっきの10%)の分を、日本で払う税金から差し引いてあげますよ」という制度です(所得税法という法律の第95条で決められています)。二重に取られた分を、日本側で調整して返してくれるイメージです。
上の例で言えば、アメリカで引かれた10ドル分を、日本の所得税から差し引ける可能性があります。うまくいけば、手取りが72ドルから80ドル近くまで戻ることもあります。金額が小さいと「面倒だからいいや」となりがちですが、配当が積み重なる中級者ほど、年間で数千円〜数万円の差になります。
Q3. どうやって手続きするの?難しそう…
やることは、確定申告で「外国税額控除」を申請する、これだけです。手順を5つに分けると、思ったよりシンプルです。

ここで大事な注意点がひとつ。「特定口座(源泉徴収あり)」を使っていて、いつもは確定申告していない人でも、外国税額控除を受けたいなら自分で確定申告が必要です。「特定口座だから何もしなくていい」は、この控除に関しては当てはまりません。ここを知らずに毎年取りこぼしている人が本当に多いのです。
Q4. 「総合課税」と「申告分離課税」、どっちを選べばいいの?
配当を確定申告するときは、税金の計算方法を選べます。ざっくり言うと、年収が低めの人は「総合課税」、高めの人は「申告分離課税」が有利になりやすいという傾向があります。

「損益通算」というのは、株で出た損と配当のもうけを相殺して、税金を軽くできる仕組みのことです。どちらが得かは人によって変わるので、迷ったら両方で試算してみる(国税庁のサイトは自動で計算してくれます)のがおすすめです。
Q5. NISAで米国株を持っていれば、税金ゼロで最強ですよね?
ここが2026年のいちばんの落とし穴です。結論から言うと、NISAでも、アメリカで引かれる10%は取り戻せません。
NISAはそもそも日本の税金がかからない口座です。ということは「日本で税金を払っていない」状態。外国税額控除は「日本で払う税金から差し引く」制度なので、差し引く相手(日本の税金)がゼロだと、そもそも使えないのです。つまりNISAで米国株を買うと、アメリカの10%だけは負担として残り続けます。
口座のタイプごとに、二重課税と取り戻しがどうなるかを整理しました。

誤解しないでほしいのは、「だからNISAは損」ではないということ。日本の20%がまるごと非課税になるメリットのほうがずっと大きいです。ただ、「NISAなら1円も引かれない」という思い込みだけは正しておきましょう。とくに配当・分配金が多い米国高配当ETFをNISAで持つ人は、10%分は残ると覚えておくと安心です。
Q6. 実際、いくらくらい取り戻せるの?年収別に知りたい
外国税額控除には「取り戻せる上限(控除限度額)」があり、その人の所得や税額によって変わります。ここでは**米国株の配当が年12万円(アメリカで約1.2万円が源泉徴収されているケース)**を例に、ざっくりした目安を出してみます。あくまで概算で、実際は他の所得や控除で変わる点はご了承ください。

配当が年12万円でも、1万円前後が戻ってきます。円安でドル建て配当の円換算額がふくらんでいる今、この「戻り」もその分大きくなっています。手続きは一度覚えれば毎年同じ。時給に換算すると、なかなか悪くない作業です。
Q7. 投資信託(オルカンなど)でも同じ手続きがいるの?
ここはうれしいニュースです。日本の投資信託(オルカン=全世界株式や、S&P500に連動する投信など)の場合、二重課税の調整が自動でおこなわれる仕組みがあります。2020年から始まった「投資信託等の二重課税調整制度」というもので、投信の中で外国に払った税金を、分配金を出すときに自動で差し引いて計算してくれます。
つまり、国内の投信を特定口座で持っている人は、原則として自分で外国税額控除の確定申告をしなくても、二重課税が調整済みというわけです。「オルカンを積み立てているだけの人」は、この点で手間がかからずラクなんですね。
一方で、米国ETF(VOOやVYMなど、アメリカに上場している商品)を直接買っている場合は、この自動調整の対象外です。自分で確定申告をしないと10%は戻ってきません。同じ「米国の株に投資する」でも、入れ物(商品)によって手続きが変わるのがポイントです。

「手間をかけたくないなら国内投信、自分で選んでコストを抑えたいなら米国ETF」——どちらが良い悪いではなく、性格に合うほうを選べばOKです。ただし、米国ETFや個別株を選ぶなら「配当は確定申告で取り戻す」がセットになる、と覚えておきましょう。
Q8. 為替が動くと、取り戻せる金額も変わるの?
はい、変わります。外国税額控除で使う金額は、配当を受け取った日のレートで円に換算して計算します。ですから、円安のとき(1ドルが高いとき)に受け取った配当は、円に直したときの外国課税額も大きくなり、その分、取り戻せる金額の「規模」も大きくなります。
2026年7月のように162円台の円安局面では、数年前の110円台のころと比べて、同じ100ドルの配当でも円換算で5割ほど価値が大きくなっています。取り戻せる金額(円ベース)も、それだけ無視できない大きさになっているということ。「たかが10%」と思わず、一度ご自分の年間取引報告書で外国所得税の合計額を確認してみてください。
まとめ:今日からできる3つのこと
米国株の二重課税と外国税額控除について、大事なところをおさらいします。
まず、米国株の配当はアメリカで10%、日本で20.315%と、二重に引かれています。この二重取りを調整してくれるのが外国税額控除で、確定申告をすれば取り戻せる可能性があります。ただしNISA口座だけは例外で、アメリカの10%は取り戻せません。
最後に、今日からできる行動を3つにまとめました。
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自分の口座タイプを確認する:特定口座(源泉あり)や一般口座なら、外国税額控除を取り戻せる対象です。まずはそこをチェック。
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年間の外国課税額をざっくり把握する:証券会社の年間取引報告書に「外国所得税」の金額が載っています。数千円以上あるなら、申告する価値は十分あります。
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来年の確定申告に向けてメモしておく:令和7年分の申告は終わっていても、令和8年分(2027年春の申告)に向けて「配当は確定申告で取り戻す」とカレンダーに一言メモを。これだけで毎年の取りこぼしがなくなります。
税金の話は「難しそう」で止まってしまいがちですが、外国税額控除は一度やり方を覚えれば毎年使える、地味だけど効くお得ワザです。円安で戻る金額が大きい今こそ、はじめの一歩を踏み出してみてくださいね。
※本記事は2026年7月時点の情報をもとにした一般的な解説です。税金の取り扱いは個人の状況により異なります。実際の確定申告にあたっては、国税庁の情報や税理士など専門家にご確認ください。投資は自己判断・自己責任でお願いします。
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最後にひとつ質問です。あなたは米国株・米国ETFの配当を、確定申告(外国税額控除)で取り戻していますか?「もう取り戻してる」「まだやってない」など、よかったらコメントで教えてください。次の記事づくりの参考にします。
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な判断はご自身の責任で行っていただき、本記事内容に基づく損失について当サイトは一切の責任を負いません。
