はじめに
「円安だし、そろそろドルを持っておいたほうがいいのかな」
2026年7月、そんな気持ちになっている方は多いと思います。ドル円は162円台という約40年ぶりの円安水準。銀行に行けば「今なら外貨預金がおすすめですよ」と声をかけられることもあるでしょう。でも、ちょっと待ってください。同じ「ドルで持つ」でも、外貨預金・外貨MMF・ドル建ての短期債券では、手数料も利回りも税金も、じつはけっこう違います。この記事では、3つを正面から比べて「あなたに向いているのはどれか」を一緒に整理していきます。
いま、なぜ「外貨で持つ」話が盛り上がっているのか
まず、2026年7月の状況をかんたんに押さえておきましょう。
アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は、2026年6月の会合で政策金利(お金を貸し借りするときの基準になる金利)を年3.50〜3.75%で据え置きました。それどころか、原油高やインフレ(物価が上がり続けること)を警戒して、「次は利上げもあり得る」という見方まで出てきています。市場では7月末の会合(7月28〜29日)で追加利上げがあるかどうか、確率は「ほぼ五分五分」とされています(Bloomberg、外為どっとコム)。
この「アメリカの金利が高いまま」という状況が、外貨で持つ話を熱くしています。日本の普通預金の金利が年0.2%前後なのに対し、ドルで置いておくだけで年4%前後の利息がつく。しかも円安で、円に戻すときの為替差益(為替の動きで得られる利益)も期待できるかもしれない。そう考える人が増えているわけです。
ただし、ここで大事なのは「同じドルで持つ方法」がいくつもあって、それぞれ性格が違うということ。次から具体的に見ていきます。
そもそも3つはどう違う? ざっくり全体像
今回くらべるのは、次の3つです。
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外貨預金:銀行にドルのまま預ける仕組み。普通預金型と定期預金型があります。
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外貨MMF:証券会社で買える、外貨で運用する投資信託の一種。おもに海外の短期国債などで運用され、安全性が高めとされます(MMF=マネー・マーケット・ファンド=短期のお金を運用するファンド)。
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ドル建ての短期債券・ETF:アメリカの短期国債や、それをまとめた上場投資信託(ETF=証券取引所で売買できる投資信託)を直接持つ方法。
まずは全体像を表で見てみましょう。

数字は2026年7月時点の一般的な目安で、金融機関や商品によって変わります。ぱっと見てわかるのは、「外貨預金はいちばん手軽だけど、手数料と税金でやや不利になりがち」という点です。ここを掘り下げていきます。
その1:為替手数料は「往復」で効いてくる
外貨で持つときにいちばん見落とされがちなのが、為替手数料です。円をドルに替えるとき(往路)と、ドルを円に戻すとき(復路)の両方でかかります。つまり「往復」で負担するわけです。
ここが金融機関によって大きく違います。たとえば大手銀行の窓口だと1ドルあたり片道1円かかることも珍しくありません。一方、ネット証券の外貨MMFやネット銀行の外貨預金なら片道25銭ほどで済むこともあります。
100万円分(1ドル162円で約6,173ドル)を往復した場合の手数料を比べてみましょう。

同じドルを持つのに、往復するだけで約9,000円も差がつくことがあるのです。せっかく年4%の利息をねらっても、手数料でその大半が消えてしまっては本末転倒。「どこで買うか」は「何を買うか」と同じくらい大事、というのがよくわかります。
その2:税金の扱いが意外とちがう
もうひとつ、初心者の方がつまずきやすいのが税金です。じつは為替差益(円安で得した分)にかかる税金の種類が、外貨預金とMMF・ETFで違います。

ここでのポイントは2つ。ひとつは、外貨預金の為替差益は「雑所得」で総合課税になるため、その人の他の収入と合算されて税率が決まること。給料が高い人ほど、為替差益にかかる税率も高くなりやすいのです(住民税とあわせて最大で約55%になることも)。
もうひとつは、外貨MMFやドル建てETFは「申告分離課税」で税率が一律20.315%に固定されていて、しかも株や他の投資信託の損失と相殺(損益通算)しやすいこと。副業と本業を並行していて所得が読みにくい方ほど、この「税率が読める・計算しやすい」というのは地味に効いてきます。
その3:1年後、手元にいくら残る?(シミュレーション)
では実際に、100万円を1年間ドルで運用したら手元にいくら残るのか、ざっくり試算してみましょう。前提は「1ドル162円で買って、1年後に165円の“やや円安”で円に戻す」ケースです(利回りと手数料は前掲の目安を使用、税金は考え方をそろえるため為替差益ぶんのみ概算)。

※税金や再投資、価格変動を単純化した概算です。実際の成績を保証するものではありません。
わずかな差に見えるかもしれませんが、手数料と利回りの違いで、1年で1万6千円ほどの差が出ています。これが5年、10年と積み上がれば、無視できない金額になります。「利回りが高い商品」だけでなく「コストが低い持ち方」を選ぶことが、じわじわ効いてくるわけです。
その4:「安全」と言われるけど、何がどう安全なの?
外貨MMFは「安全性が高い」とよく紹介されます。でも、初心者の方にとっては「投資なのに安全ってどういうこと?」と引っかかるところだと思います。ここを整理しておきましょう。
外貨MMFが安全とされる理由は、運用の中身にあります。おもにアメリカなどの「短期の国債」や、信用度の高い会社が発行する短い期間の借用証書(コマーシャルペーパー)で運用されているためです。返ってくるまでの期間が短いお金は、価格が大きく動きにくく、値下がりのリスクが小さいとされます。だから「株のように大きく増えないかわりに、大きく減りにくい」性格を持っているわけです。
ただし、ここで気をつけたい「安全」の中身の違いがあります。

大事なのは、どの方法を選んでも「為替のリスク」だけは共通して残るということです。ドルベースでいくら安全でも、円に戻すときに円高(たとえば162円→150円)になっていれば、円で見た金額は目減りします。「安全=絶対に損しない」ではなく、「ドルの中身は安定しているが、円との交換レートは動く」と理解しておくのが、外貨で持つときの第一歩です。
なお、外貨MMFやドル建てETFは証券会社の「分別管理」(会社の資産と顧客の資産を分けて管理する仕組み)の対象になり、万一その会社が破綻しても資産は守られやすい一方、外貨預金は預金保険(ペイオフ)の対象外です。銀行が破綻したときに1,000万円まで保護される円の預金とは、扱いが違う点も覚えておくとよいでしょう。
その5:新NISAの中では買えないので注意
もうひとつ、意外と知られていない実務的な話をしておきます。この3つは、いずれも新NISA(少額投資非課税制度)の非課税の枠では基本的に買えません。外貨預金は預金なのでそもそも対象外ですし、外貨MMFやドル建ての短期債・ETFも、新NISAで買えるのは投資信託や上場株式など決められた商品にほぼ限られるためです。
つまり、今回の3つは「非課税のうまみ」ではなく、あくまで「高いドル金利を活かして、待機資金を少しでも働かせる」目的で使う場所、と割り切るのが現実的です。円安・高金利の局面で、投資に回すまでの一時的な置き場所として使う。そんなイメージがしっくりきます。
じゃあ、結局どれを選べばいい?
3つとも「ドルで持つ」という点は同じですが、向いている人は少しずつ違います。ざっくり整理すると次のようになります。

大切なのは「今すぐ全額を一気にドルに替える」必要はない、ということです。162円という水準は約40年ぶりの円安。ここからさらに円安が進むのか、それとも野村證券が2026年末の見通しを154円としているように少し円高に戻るのか、プロでも見方が分かれています。だからこそ、一度に替えずに何回かに分けて買う(時間の分散)のが、初心者の方には心強い方法です。
まとめ:3つの合言葉「コスト・税金・分散」
最後に、今日のポイントを振り返ります。
まず、外貨で持つ方法は「外貨預金・外貨MMF・ドル建て短期債/ETF」の3つが代表格で、利回りはどれも年3〜4%台と近い一方、為替手数料と税金の扱いで手取りが変わるということ。とくに為替手数料は往復で効くので、大手銀行の窓口(片道1円)とネット証券(片道25銭)では、100万円で往復9千円もの差がつきます。
次に、外貨預金の為替差益は総合課税の雑所得になりやすく、収入の高い人ほど不利になりがち。一方、外貨MMFやETFは一律20.315%で税率が読めて、損益通算もしやすいこと。
そして、162円という約40年ぶりの円安局面だからこそ、一度に全額を替えない「時間の分散」が安心につながる、ということでした。
きょうの行動提案はシンプルです。もしあなたが「そろそろドルを」と考えているなら、まずは使っている銀行・証券会社の「為替手数料(片道いくらか)」を1つ調べてみてください。それだけで、あなたのドル資産の“実力”がぐっと見えやすくなります。
本記事は2026年7月17日時点の公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、特定の商品の購入を勧めるものではありません。金利・為替・手数料は変動し、記載の数値は目安です。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。
参考にした情報
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FOMC・政策金利・追加利上げ観測(2026年7月):Bloomberg「FOMC、7月利上げの確率は五分五分」、外為どっとコム マネ育チャンネル(2026年7月13日)
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2026年末ドル円見通し154円:野村證券 ウェルスタイル
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外貨預金・外貨建MMFの金利・為替手数料の目安(2026年7月):各社公開情報(みずほ証券、楽天証券、松井証券ほか)
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本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な判断はご自身の責任で行っていただき、本記事内容に基づく損失について当サイトは一切の責任を負いません。
